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一般民事

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一般的な民事事件はどのように行われるのでしょうか。

ここでは、知人に300万円を貸したのに、返済期限が来ても返してくれない。そこで、貸した300万円を返してくれ、という訴えを起こした場合を例にとって説明します


事件の背景

 
ある日Cさんが、Aさんと共通の知人であるBさんを通じて「頼みごとがあるので、会って話を聞いて欲しい」と言ってきました。そこで、Cさんの話を聞くことにしました。そこには、Bさんも同席しました。Cさんによれば、けっこうな儲けの出そうな商売をやるので、その資金として300万円を貸してほしい。1年後に15%の利息をつけて返すから。ということでした。Aさんは、お金を貸すことを承知し、翌日、Cさんの口座に300万円を入金しました。しかし、契約書は作りませんでした。ただ、入金後、Cさんから「300万円を受領しました」という受領書が送られてきました。

1年後

1年たちました。Aさんは、こちらから催促しなくても、Cさんから返済されると思っていましたところ、約束した返済の日を過ぎてもいっこうにCさんからお金が戻ってきません。そこで、AさんはCさんに電話をかけて、300万円を利息を付けて返してほしいと言いました。ところが、Cさんが言うには、商売は失敗してしまったから、お金は返せない、ということでした。「なぜだ」と、きくと、「あの300万円は、借りたのではなくて、出資として受け取ったのだ、だから、商売が失敗してしまい利益がでなかった以上、返すことはできないし、返す義務もない」などといいます。
Cさんが言っていることは、約束とちがいます。Aさんは、Cに少し強めのことばで、内容証明を送り、返済を要求しましたが、やはり、借りたのではなく出資を受けたものなので返す義務はない、という回答書が届きました。


訴訟の始まり

Aさんは、ネットで検索したところ、Kという弁護士に行きあたり、K弁護士の事務所に電話してアポをとり、K弁護士の事務所に行きました。K弁護士にこれまでの経緯を話しました。
K弁護士から、訴訟を起こした場合の見通しと弁護士費用の説明がありました。
Aさんは、K弁護士に訴訟を依頼することにしました。
委任契約書と訴訟委任状に署名押印して、K弁護士にCさんに対する訴訟を依頼しました。

K弁護士からファクシミリで訴状の案文が送られてきました。訴状案には、請求の趣旨というところに、「被告は原告に対し300万円と利息・遅延損害金を払え」という結論的なことと、請求の原因というところに、AさんがK弁護士に話した事実を、法律的に構成した文章が書かれていました。K弁護士によれば、請求の原因のところについて、事実と違っているところがないか確認して欲しい、とのことでした。
Aは、訴状案を読み、事実として違っているところはなかったので、K弁護士に電話で「事実関係に間違いはない」と回答しました。
K弁護士は、翌日、裁判所に訴状を提出し、訴えを起こしました。
K弁護士から、約1ヶ月後の○月○日に第1回口頭弁論期日が決まったという連絡がありました。Cさんには、訴状が送られるので、第1回期日の前に、Cさんからの答弁書が提出されると思うということでした。



訴訟の経緯

第1回期日の1週間前頃に、Cさんが依頼したL弁護士から答弁書がK弁護士のところに送られてきました。答弁書には、案の定、お金は借りたものではなく、出資を受けたものだから、利益が出ていない以上返す理由はないから、Aさんの請求を認めない、ということが書かれていました。

○月○日、第1回口頭弁論期日
K弁護士は、訴状を陳述し、証拠として甲第1号証から甲第5号証を提出しました。
次回、原告Aさんは、Cさんの答弁書に対する反論の書面を提出することになりました。
1か月後の、○月○日、第2回口頭弁論期日、K弁護士は、第1準備書面を陳述しました。K弁護士は、第1準備書面で、利益の分け前をどのようにするかという話がなかったのだから、出資ではなく、お金の貸し借りである、という主張をしました。
裁判官は、原告、被告双方に、話し合いでの解決(和解)が可能かどうかたずね、次回いくらならば、和解できるか、検討してくるように、指示しました。
K弁護士は、Aさんと相談したところ、Aさんとしては、和解で解決するならば、250万円以上でなければならない、ということでした。
1ヶ月後の○月○日、第3回期日、弁論準備期日が行われました。弁論準備期日は、法廷ではなく、小さな普通の部屋で、裁判官と原告弁護士、被告弁護士が顔を突き合わせて、行われます。
K弁護士は、最低でも250万円でなければ、和解できないと言いました。 
これに対し、L弁護士は、50万円以上は、支払う気はない。という回答でした。
裁判官は、金額に差がありすぎるので、この段階での和解は、不可能と判断し、訴訟手続きを進行し、次回、双方、証人申請と申請予定の証人及び本人の陳述書を提出するように指示しました。
1ヶ月後の○月○日、第4回期日、弁論準備期日が行われました。
K弁護士は、Aさん本人の陳述書とBさんの陳述書を証拠として提出し、証人としてBさん、原告本人としてAさんの尋問を申請しました。
L弁護士は、Cさん本人の陳述書と一緒に事業をしたというDさんの陳述書を証拠として提出し、証人としてDさん、被告本人としてCさんの尋問を申請しました。
裁判官は、1か月後の○月○日を、証人及び原告被告本人尋問期日として指定しました。尋問時間も決めました。
証人Bさんについて、主尋問20分 反対尋問20分
原告Aさんについて、主尋問30分 反対尋問30分
証人Dさんについて、主尋問20分 反対尋問20分
被告Cさんについて、主尋問30分 反対尋問30分
と決まりました。

○月○日、尋問手続きが行われました。尋問終了後、裁判官が、和解を双方に勧め、次回は、和解期日を指定しました。裁判官の言う和解案は、200万円を被告が原告に支払うというものでした。裁判官は、次回までにこの和解案を受け入れるか否か双方検討してくるようにといいました。



和解か判決か

○月○日、和解期日が行われました。
K弁護士、L弁護士がそれぞれ交代で部屋に入り、裁判官に200万円という和解案を了承するか否かを伝えました。
L弁護士は、200万円の和解案を了承するとのことです。
ここで、Aさんとして、200万円を了承して、和解を成立させるか、判決を求めるか、分かれ道です。そこで、場合を分けます。

和解を成立させた場合(訴訟は終了します)

和解が成立しました。和解の内容は、被告Cさんは、毎月50万円ずつ、4回に分割して計200万円を原告Aさんに支払うというものでした。
和解が成立すると、それは、確定した判決と同じ効力があります。
もし、Cさんがこの和解の約束を破って、途中で支払わなくなったら、Aさんは残金全額をいっぺんに請求することができ、その金額について、Cさんの財産(不動産や給料など)を差し押さえてお金にかえてそこからとることができます。

和解を成立させなかった場合(判決に向けて訴訟が更に進行します)

Aさんとしては、Cさんが貸してくれというから300万円を貸したのであるから、
100万円も少ない200万円など到底認められないとして、200万円の裁判官の和解案をうけいれませんでした。
和解は成立せず、裁判官は、次回、最終準備書面ないし主張を補充する準備書面を提出するなら提出するようにと言って、次回で結審予定である旨を言い添えて、口頭弁論期日を○月○日に指定しました。
○月○日、原告代理人K弁護士、被告代理人L弁護士双方は、最終準備書面を陳述し、裁判官は、判決期日を○月○日に指定しました。

○月○日、判決期日
パターン[1]
被告は原告に対し、300万円並びに利息及び遅延損害金を支払えという判決が言い渡されました。
パターン[2]
原告の請求を棄却する。という判決が言い渡されました。

和解をすることの意味

パターン[1]の場合は、不服のある被告Cさんは控訴するでしょうし、[2]の場合は、原告Aさんが控訴するでしょう。簡単化のために、控訴審の判決も第一審の判決と同じ判断をするとし、上告は双方ともしないと仮定します。

即ち、
パターン[1] 控訴人(被告Cさん)の控訴は棄却されました。
パターン[2] 控訴人(原告Aさん)の控訴は棄却されました。

Aさんに仮に予知能力があり、パターン[2]の控訴審判決が和解の前にわかっていたと仮定すれば、当然200万円でも和解を成立させたでしょう。
では、パターン[1]の控訴審判決が和解の前にわかっていたと仮定すれば、200万円での和解など到底成立させなかったといえるでしょうか。
ここは、一概に、300万円>200万円だから判決の方がよい、とは言い切れないのです。
300万円を支払えという判決が出たからと言って、自主的に300万円を支払ってくる人はめったにいません。では、その場合どうするかというと判決に基づいて強制執行、即ち、Cさんの財産を差し押さえ、強制的にお金に変えてそこから300万円を回収するのです。しかし、強制執行による回収が現実にできるためには、どこに、どんな財産(土地、預金、給料など)があるかわからなければ、事実上強制執行ができませんし、財産が判明したとしてもそれを強制的にお金に換えて、300万円になるかどうかわかりません。つまり、300万円の判決を得たとしても、それが現実に300万円になるかどうかはなかなか難しいのです。
これに対し、和解の場合は、もし被告Cさんが和解の約束を破れば強制執行となって判決の場合と同様になりますが、本人Cさんが和解という約束に従って支払いますと約束する以上、現実に200万円が支払われる可能性が判決の場合よりも高いと言えます。また、第一に、パターン[2]という判決の危険を避けることができます。

このように、事案にもよりますが、和解で解決するというメリットというものがあります。
但し、誤解していただいてはいけないのですが、和解のメリットがあるからといって、訴訟における主張、立証を懸命に、十分にやらない、ということではない、ということです。
それは、判決になる可能性が常にあるわけですから、当然ですし、判決にならないとしても、有利な和解案を引き出すためにも、主張、立証に手を抜くことはできないからです。


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